じゃがいもが発芽しました。
じゃがいもが発芽した。
台所の片隅で、だいぶ前に買ったじゃがいもが発芽していた。
全部使えばいいのに、なぜかいつもひとつ、ふたつ、と残してしまう。
そのうちのひとつから、大きな芽が出ていた。
色の悪くなったじゃがいもは、大きな芽に栄養を吸い取られて深いしわを刻んでいる。
この芽に含まれている神経性の毒の一種で有名なものが“ソラニン”である。
宮崎あおい主演の映画のタイトルにもなったし、その主題歌をASIAN KUNG-FU GENERATIONが歌ったことでも有名である。
たとえばゆるい幸せがだらっと続いたとする
きっと悪い種子が芽を出して
もうさよならなんだ
これは私の一番好きな歌詞のフレーズである。
まさに私の人生もその通りで、ゆるい幸せがだらっと続いていた。
私はこのまま続けられると思っていたけれど、そうではなかった。
ワイドショーでよく取り上げられるような、そんな話が自分に降りかかってくるとは思いもしていなかった。
よくあることである。
珍しいことではない。
そう思っても、割り切れない思いが頬を伝って落ちた。
私は手元に残ったじゃがいもに目をやる。
干からびたじゃがいもに、大きく伸びた芽が対照的で、私は目を細める。
しばらく考えて、無造作にそのじゃがいもをゴミ箱に放り込んだ。
もう、さよならなんだ。
パソコンに向かう。キーボードを叩く。
こうやって思いを吐き出して、私は毎日を生きていく。